ピアニストからの手紙トップ ピアノに関するQ&A-速く弾くパッセージについて(2)

ピアノに関するQ&A-速く弾くパッセージについて(2)

2020.12.30

Q:装飾音やトリルなど、どうあがいても速く弾けません。

 

A:(講師:塩川)不思議なことに、物事に取り組むときに必要以上に頑張ろうとすると大抵は失敗するという現象が存在します。

原因としては、力むことによる筋肉の引きつり、物の見方においての視野の狭小化などに由来すると思います。

例えば装飾音のほとんどの場合、一つ一つの音価は短いので聞いてる限りにおいては速度が速くなったように感じます。その時に「速く弾こう」と思いすぎると、前述の通り筋肉がこわばり上手くコントロールすることができなくなります。
「連符では速く弾こうと思うのは当然では?」と感じるのは当然でしょうが、あながちそうでもありません。拍という観点に立つと、特に指示がない限り曲の最初から最後まで拍の間隔は一定です。つまり装飾音がでてこようが、64分音符が出てこようが、曲全体としては全くもって速くはなっていません。単に一拍の中に音が沢山あるかどうかの話となります。つまり、「速くなっている」という錯覚を感じているだけです。

ならば具体的にどうすればよいかというと、簡単に言うなら速く弾こうとは思わず「綺麗に美しく弾こう」と考えてください。
綺麗、美しいという単語から何を想像しますか?きっと優美立ち振る舞い、キラキラしたもの、滑らかな曲線、などの概念が思い浮かぶとおもいます。考え方は人それぞれですが、間違っても無骨なおじさん、荒々しい岩山、などは連想しないでしょう。

人間は私たちが思っている以上に行動が考え方に依存する生き物です。何かしら柔和なものをイメージすると、不思議と筋肉のこわばりが抜け、瞬発性を活かせるよい弛緩状態になることができます。

 

 

 



PROFILE

ダリ・インスティテュート「ピアノ教室」
塩川 正和
ダリ・ピアノ教室講師
アドバンスコース特別講師

福岡第一高等学校音楽科卒業。在学中に福岡県高等学校音楽文化連盟コンクールにてグランプリ、ショパンコンクール in Asia 協奏曲C部門九州大会金賞、北九州芸術祭クラシックコンクール一般の部において最年少17歳で大賞及び県知事賞を受賞するなど、コンクールにて研鑽を積む。
また、ボルドーにて開かれたユーロ・ニッポンミュージックフェスティバルに招待演奏者として参加し、ソロ曲及びシュピーゲル弦楽四重奏団とシューマン作曲のピアノ五重奏曲を演奏し好評を博す。

フランスのパリ・エコールノルマル音楽院にフジ・サンケイスカラシップの奨学金を受け授業料全額免除で入学。
20歳にて同校の高等教育課程ディプロムを、翌年には高等演奏課程ディプロムを取得。
エクソンプロバンス・ピアノコンクールにて3位受賞、フラム国際コンクール及びフォーレ国際コンクールにてファイナリスト。

ラヴェル等のフランス印象派の作曲家作品を中心としたリサイタルやアルベニス作曲の組曲「イベリア」の全曲演奏を行うなどのほか、デュオや伴奏活動も積極的に行っている。
北九州芸術祭、長江杯国際コン クール等にて優秀ピアノ伴奏者賞を受賞。

現在は東京を中心に演奏活動を行い、ダリ・インスティテュート(ダリ・ピアノ教室)での指導のほか、日本各地で後進の指導にあたっている。
これまでにピアノを黄海千恵子、故宝木多加志、ブルーノ・リグット、イヴ・アンリ氏に、室内楽をクロード・ルローン氏に師事。

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