ピアノに関するQ&A-指の独立について
Q:16分、32分音符などの速いパッセージが流れるように弾けません。また、4と5の指の独立のための効果的なトレーニング方法を教えてください。
A:早いパッセージを弾く際の指の独立に対して不安があれば、まずはピアノの基礎から見直しましょう。
持論ではピアノの最も基礎となるところは物凄くシンプルで、
①第一関節を曲げず指先で打鍵する、
②膝の先が鍵盤に隠れる程度の位置に座り腕は地面と平行になる椅子の高さで、
③指を鍵盤上で滑らせない、
と3つの原則を守れていれば問題ありません。逆に言うと、その三つのうちどれか一つでも欠けていると不自然な奏法となり、無理して弾くと身体を痛めやすくなります。
その次に考慮するべきは、手の形、指の配置です。ここからは「絶対にこうするべきである」というのではなく、これから演奏するテクニックによって柔軟に弾き方を変化させる必要があります。
まず手の配置についての基本的なルールとしては「可能な限り親指が黒鍵に来ることを避ける」というものがあります。これは一番短い指である親指で黒鍵を弾いてしまうことにより、手全体を奥側へ移動させないといけなくなってしまうので無駄な動きが発生してしまうためです。(ただし人間の手は片手で5本しかないため、否応なしに黒鍵を親指で弾く機会は無数にあります)
その親指の配置を踏まえた上で、両手併せて8本の他の指をどの様に配置させれば全ての指が楽にスムーズに動くか、を実際に演奏して決めていくとよいかと思います。指を配置する際は一次元的に考えるのではなく二次元的に見ることによって(つまり鍵盤の奥行きも考慮する)、同時にその演奏の際の適切な指の形も形成されていきます。
さて、ここまできてようやくそれぞれの指の独立について考えていきましょう。
この問題はそれなりに長い時間のトレーニングが必要となりますが、様々な練習曲使いつつ、一つ一つを集中して行えば、まだピアノを始めたばかりの手の小さな子どもたちでもしっかりと指を分離して弾くことができます。
1-2-3の指はそこまで苦労することはないでしょうが3-4-5の指は3-4の筋肉の腱が手首あたりでくっついていること、5の指は小さく筋力も弱い事、によってバラバラの動きが多少困難となっています。
ハノンやツェルニーの練習曲で実践的に鍛える際は、手首をある程度しっかり固定し、なるべく指の力と自重だけで弾くよう心掛けてください。少し指を高くあげるハイフィンガー奏法も無理なく取り入れると効果的です。(「手を痛める悪名高い古き奏法」として汚名を浴びて久しいですが、計画的に練習に取り入れる分にはむしろ推奨されてもよいのでは、と個人的に思っています。)
トレーニングの他にできる対策としては、そもそも運指で4と5の指が不自然に連続するようなものを避けること、新しく譜読みを始めた曲であれば完成を急がず長い目で見て練習を行うこと等もしっかり考慮したうえで練習できればよいでしょう。
特に譜読みの段階で完成を急ごうと無理をして速く弾こうとして、心理的な要因で身体が硬直していることが学習者の多くに見られます。
トレーニングすることも大事ですが、長くピアノを弾いてこられた方にとっては大抵の場合「力み過ぎ」が指の独立を妨げている(ように見える)要因なのではないかなと感じます。
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