ピアノに関するQ&A-様々な奏法について(スタッカート)
Q:スタッカートを弾くときどんな意識や心がけをしてますか?また、引っかいたり、叩いたり、と先生によって色々言うことは違いますがどれが正解でしょうか。
A:ピアノのスタッカート奏法はとても奥が深く、簡単に説明するには難しいところがあります。対になる奏法のレガートはメロディーにおけるフレーズの基礎になりますが、スタッカートに関してはその種類によって何かしら特別な音楽的意味合いを含んでいることが多くあります。
同じスタッカートでも、例えばギターなどの撥弦楽器的なもの(デタッシェ)や打楽器的なもの(マルテレ)などの他の楽器のような音色を想定した指示があったり、またバロック時代の曲ですと、元がチェンバロを想定して書かれてる曲も多いため、表記になにも指示されてなくともチェンバロのような弦を引っ掻く音色をイメージして打鍵する必要があります。
また、ロマン派から近現代まで幅広く「雨の音」の表現もスタッカート奏法で行います。そのスタッカートの鋭さ加減を調整することによって、曲中で表される雨量をも調整することができ、聴き手にとってはスタッカートひとつでどんな雨模様なのか想像することができます。面白いですよね。
このようにその楽曲の求めるケースによって様々なスタッカート奏法が必要とされます。何か一つが正しいというわけではなく、先生方はその曲にあったスタッカート奏法のうちの一つを提示しているだけにすぎません。
他にも、厳密にはスタッカートではありませんが、細かな速いパッセージのスケールを少しスタッカート気味に弾くと、とても演奏効果は高くなります。ややハイフィンガー(文字通り指を少し高くあげること)奏法を意識すると細かな音も一つ一つとても明確に聞こえるため、様々なピアノの名手が多様していますが、あまりやり過ぎると大切なレガートの表現が失われてしまうため、個人的には使いどころが肝心だと思っています。