ピアニストからの手紙トップ ピアノに関するQ&A-脱力・重力奏法について

ピアノに関するQ&A-脱力・重力奏法について

2020.04.27

Q:体(腕)の重みを使って弾くという感覚がどんなものか分かりません。また、手首の脱力がいつまでたってもできず、逆に指の力を鍛えようと思っても筋肉痛になりそうです。

 

A:(講師:塩川)手首の脱力や指の筋トレについて、なぜそれを行うのかという根本的なところから考えた方がよいかと思います。

 

まず脱力に関して、やたら頻繁に脱力脱力と連呼しているシーンも垣間見ることがありますが、ただ「力を抜けばいい」と単純化して言うのはちょっと短絡的かなと思います。

本当に力を抜いてしまったら鍵盤は押せませんよね?

正しくは「必要な時に必要な分だけ筋肉を使って、いらない力は使わない」と言い直すと明確に説明できると思います。

必要以上に手首がこわばって弾きづらいのであれば、曲をゆっくり練習している時に手首の筋肉に意識を集中させてみてください。キツい感じがしたら、「この箇所で手首のこの部分が固くなっているんだな」と頭の中で思ってみてください。思うだけで大丈夫です。

その気付きを繰り返し行えば、自然に不必要な力は抜けていきます。

たったそれだけで解決するなんてにわかには信じられないかもしれませんが、これはかの有名な「アレキサンダー・テクニーク」の根本的な実践方法の他、原始仏教の実践的な瞑想法でも活用されており、ピアノに限らずあらゆる分野で有効とされています。

 

次に指の筋肉のトレーニングですが、何のために指の力を鍛えるのか、というのをまずは考えた方がよろしいのではないでしょうか。

ただ闇雲に指に筋肉があればいい、という考えはちょっと違うのではないかと思っています。

例えばとある練習している曲があり、その曲のこの部分をこういう音で弾いたい、早いパッセージは速度を落とさずミスなく正確に弾きたい、音を一つずつハッキリと弾きたい、など要求は様々に思い浮かぶでしょうが、それぞれのポイントによって練習の仕方、鍛え方は変わってきます。

まず目標(=どういう演奏をしたいか)をはっきりさせ、それを達成するためにはどういう練習方法でアプローチすればよいかを明確にする必要があります。

 

上記の二つを考慮した上で、実際に必要になる演奏法が「重力奏法」という基礎的な弾き方です。

これは指導される先生の指導方法や実際に弾く人によってすんなりと出来ていたり、コツを掴むのに苦労したりするのですが、習得しやすい方法として三つほどご紹介します。

一つは、オクターブを使った練習を沢山すること。ハノンの教本の中にオクターブで行う全調のスケールの練習があると思いますが、あれを自身の可能な限り速いテンポで弾きます。
腕を壊さない範囲で休憩しつつ毎日やれば、嫌でもうでの重みがわかるでしょう。

もうひとつは腕や指に重石をつけること。各指用の重石は専門のものが楽器店においてあったりしますので、気になるのであれば店頭で試用させてもらうのも良いかと思います。他にも手首辺りに筋トレ用の重り(ジョギング用の足首につける重りを私は使用してました)をつけても効果は得られます。

上記の二つは手を痛める可能性があるため、細心の注意をもって行ってください。

最後は、多分一番やりやすい方法となります。椅子には座らず、床に中腰座り(俗っぽく言うと「ヤンキー座り」とも)をしながら弾くと、ぶら下がる形になり強制的に腕の重みだけを頼ることとなります。

あまりお行儀はよくないので、誰もみていないところでこっそりと行うことをお勧めします。

 

重力奏法さえ使えばあらゆる楽曲がうまくなる、とは流石に言いませんが、腕の疲れや手の痛みなど、大部分の身体的、テクニック的な悩みは解決されるでしょう。

PROFILE

ダリ・インスティテュート「ピアノ教室」
塩川 正和
ダリ・ピアノ教室講師
アドバンスコース特別講師

福岡第一高等学校音楽科卒業。在学中に福岡県高等学校音楽文化連盟コンクールにてグランプリ、ショパンコンクール in Asia 協奏曲C部門九州大会金賞、北九州芸術祭クラシックコンクール一般の部において最年少17歳で大賞及び県知事賞を受賞するなど、コンクールにて研鑽を積む。
また、ボルドーにて開かれたユーロ・ニッポンミュージックフェスティバルに招待演奏者として参加し、ソロ曲及びシュピーゲル弦楽四重奏団とシューマン作曲のピアノ五重奏曲を演奏し好評を博す。

フランスのパリ・エコールノルマル音楽院にフジ・サンケイスカラシップの奨学金を受け授業料全額免除で入学。
20歳にて同校の高等教育課程ディプロムを、翌年には高等演奏課程ディプロムを取得。
エクソンプロバンス・ピアノコンクールにて3位受賞、フラム国際コンクール及びフォーレ国際コンクールにてファイナリスト。

ラヴェル等のフランス印象派の作曲家作品を中心としたリサイタルやアルベニス作曲の組曲「イベリア」の全曲演奏を行うなどのほか、デュオや伴奏活動も積極的に行っている。
北九州芸術祭、長江杯国際コン クール等にて優秀ピアノ伴奏者賞を受賞。

現在は東京を中心に演奏活動を行い、ダリ・インスティテュート(ダリ・ピアノ教室)での指導のほか、日本各地で後進の指導にあたっている。
これまでにピアノを黄海千恵子、故宝木多加志、ブルーノ・リグット、イヴ・アンリ氏に、室内楽をクロード・ルローン氏に師事。

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