ピアニストからの手紙トップ ピアノに関するQ&A-様々な奏法について(スタッカート)

ピアノに関するQ&A-様々な奏法について(スタッカート)

2020.04.27

Q:スタッカートを弾くときどんな意識や心がけをしてますか?また、引っかいたり、叩いたり、と先生によって色々言うことは違いますがどれが正解でしょうか。

 

A:(講師:塩川)ピアノのスタッカート奏法はとても奥が深く、簡単に説明するには難しいところがあります。対になる奏法のレガートはメロディーにおけるフレーズの基礎になりますが、スタッカートに関してはその種類によって何かしら特別な音楽的意味合いを含んでいることが多くあります。

同じスタッカートでも、例えばギターなどの撥弦楽器的なもの(デタッシェ)や打楽器的なもの(マルテレ)などの他の楽器のような音色を想定した指示があったり、またバロック時代の曲ですと、元がチェンバロを想定して書かれてる曲も多いため、表記になにも指示されてなくともチェンバロのような弦を引っ掻く音色をイメージして打鍵する必要があります。

また、ロマン派から近現代まで幅広く「雨の音」の表現もスタッカート奏法で行います。そのスタッカートの鋭さ加減を調整することによって、曲中で表される雨量をも調整することができ、聴き手にとってはスタッカートひとつでどんな雨模様なのか想像することができます。面白いですよね。

このようにその楽曲の求めるケースによって様々なスタッカート奏法が必要とされます。何か一つが正しいというわけではなく、先生方はその曲にあったスタッカート奏法のうちの一つを提示しているだけにすぎません。

他にも、厳密にはスタッカートではありませんが、細かな速いパッセージのスケールを少しスタッカート気味に弾くと、とても演奏効果は高くなります。ややハイフィンガー(文字通り指を少し高くあげること)奏法を意識すると細かな音も一つ一つとても明確に聞こえるため、様々なピアノの名手が多様していますが、あまりやり過ぎると大切なレガートの表現が失われてしまうため、個人的には使いどころが肝心だと思っています。

 

 



PROFILE

ダリ・インスティテュート「ピアノ教室」
塩川 正和
ダリ・ピアノ教室講師
アドバンスコース特別講師

福岡第一高等学校音楽科卒業。在学中に福岡県高等学校音楽文化連盟コンクールにてグランプリ、ショパンコンクール in Asia 協奏曲C部門九州大会金賞、北九州芸術祭クラシックコンクール一般の部において最年少17歳で大賞及び県知事賞を受賞するなど、コンクールにて研鑽を積む。
また、ボルドーにて開かれたユーロ・ニッポンミュージックフェスティバルに招待演奏者として参加し、ソロ曲及びシュピーゲル弦楽四重奏団とシューマン作曲のピアノ五重奏曲を演奏し好評を博す。

フランスのパリ・エコールノルマル音楽院にフジ・サンケイスカラシップの奨学金を受け授業料全額免除で入学。
20歳にて同校の高等教育課程ディプロムを、翌年には高等演奏課程ディプロムを取得。
エクソンプロバンス・ピアノコンクールにて3位受賞、フラム国際コンクール及びフォーレ国際コンクールにてファイナリスト。

ラヴェル等のフランス印象派の作曲家作品を中心としたリサイタルやアルベニス作曲の組曲「イベリア」の全曲演奏を行うなどのほか、デュオや伴奏活動も積極的に行っている。
北九州芸術祭、長江杯国際コン クール等にて優秀ピアノ伴奏者賞を受賞。

現在は東京を中心に演奏活動を行い、ダリ・インスティテュート(ダリ・ピアノ教室)での指導のほか、日本各地で後進の指導にあたっている。
これまでにピアノを黄海千恵子、故宝木多加志、ブルーノ・リグット、イヴ・アンリ氏に、室内楽をクロード・ルローン氏に師事。

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