ピアニストからの手紙トップ ピアノに関するQ&A-楽曲の譜読みや暗譜について

ピアノに関するQ&A-楽曲の譜読みや暗譜について

2020.04.20

Q:初めて見た楽譜の譜読みが苦手です。また、一回暗譜できたものでも人前で弾くと暗譜がとんでしまうことがあります。覚えていないということでしょうか。

 

A:(講師・塩川)まず譜読みですが、これは如何に効率よくできるかというところがポイントになります。また、休憩時間としてピアノを弾いていない時間、もっというと睡眠をしっかりとることも、恐らく思っていらっしゃるよりも重要です。

 

効率の良い練習に関しては、アナリーゼ(楽曲分析)を積極的におこないましょう。(楽曲分析については別のコラムに詳しく載せています)

ほとんどの楽曲には規則性があります。その規則性に気づき、例えばある最初の方に出てくる部分と最後の方に現れる部分(特に古典的なソナタ形式の楽曲であれば簡単に見つけることができます)がわかれば、わざわざその二箇所にわたる部分をそれぞれ練習せずとも半分の練習回数で済みますし、形式に則って覚えることで暗譜力の向上にも役立ちます。

 

後者の休憩している時間を利用する、ということについては、人間の脳はぼーっとしている時はかなり脳内活動が活発になっており、その機能を有効活用します。脳の仕組みはまだ解明されていないことが多いですが、この「デフォルトモードネットワーク」という脳の機能はピアノに限らずあらゆる記憶、運動などを束ねる重要な役割をになっています。

 

次に暗譜についてですが、これについての問題は幾つかのパターンに分けることができます。

単純に練習不足の場合。本番で失敗してしまうと「こんなに練習したのに!」とつい思ってしまうこともあるでしょうが、その「こんなに」が客観的にみるとその曲のレベルに対して練習量が全然足りていない場合があります。
基本的に人間は自分自身に甘い生き物です。(科学的事実として、人間の脳はそのような構造になっているそうです)少しストイックに練習する方がむしろ丁度いいくらいです。

次に集中できていない場合。その場の雰囲気が慣れていない状況、身体の疲れ、また余りにも大量に直近でやるべき事や複数の練習している曲を抱えている、等。自身の限界を知らずに雑多なことでパンクしているのかもしれません。日頃のご自身の身体のコンディションを整えるということも大切な練習のひとつです。

最後にヒューマンエラーの場合。たまたま間違ってしまった、という事は人間にとってはよくあります。そんな時は、人生そんなもんだと割り切りましょう。あまりクヨクヨ悩むよりか甘いものでも食べて脳に栄養を送ってみてください。

 

それでは確実な暗譜のための実践的な方法についてはどのように行えばよいのでしょか。持論では、暗譜の過程には3段階に分けて考える必要があると考えていますが、ここでは最も大切な最初の段階について記述します。

暗譜はまず脳の長期記憶(側頭葉)にメロディー、和声の進行、手の大体の動きを覚えさせていく必要があります。最も分かりやすいコツとしては、日を分けて何回もさらう、先程上の方で説明した睡眠や休憩をしっかりとる、などもちろんありますが、もっとも有効的なのは「紐づけ」して覚えていくことです。

古典的な楽曲は特に、主題的なメロディー、また副主題的な幾つかのメロディーが変形、転調したり拡大・縮小などしたりして展開していきます。「こことあそこのメロディーはなんか似ているな」と気が付くことだけでも初歩の暗譜の大きな一助となるので、積極的に楽譜とにらめっこをすることをお勧めします。ご自分なりに曲を分解して、ABCなどの記号でマークをつけるなど、ピアノを弾くことばかりせずアナリーゼも大いに活用して前頭葉で考えることをより多く試みてください。

PROFILE

ダリ・インスティテュート「ピアノ教室」
塩川 正和
ダリ・ピアノ教室講師
アドバンスコース特別講師

福岡第一高等学校音楽科卒業。在学中に福岡県高等学校音楽文化連盟コンクールにてグランプリ、ショパンコンクール in Asia 協奏曲C部門九州大会金賞、北九州芸術祭クラシックコンクール一般の部において最年少17歳で大賞及び県知事賞を受賞するなど、コンクールにて研鑽を積む。
また、ボルドーにて開かれたユーロ・ニッポンミュージックフェスティバルに招待演奏者として参加し、ソロ曲及びシュピーゲル弦楽四重奏団とシューマン作曲のピアノ五重奏曲を演奏し好評を博す。

フランスのパリ・エコールノルマル音楽院にフジ・サンケイスカラシップの奨学金を受け授業料全額免除で入学。
20歳にて同校の高等教育課程ディプロムを、翌年には高等演奏課程ディプロムを取得。
エクソンプロバンス・ピアノコンクールにて3位受賞、フラム国際コンクール及びフォーレ国際コンクールにてファイナリスト。

ラヴェル等のフランス印象派の作曲家作品を中心としたリサイタルやアルベニス作曲の組曲「イベリア」の全曲演奏を行うなどのほか、デュオや伴奏活動も積極的に行っている。
北九州芸術祭、長江杯国際コン クール等にて優秀ピアノ伴奏者賞を受賞。

現在は東京を中心に演奏活動を行い、ダリ・インスティテュート(ダリ・ピアノ教室)での指導のほか、日本各地で後進の指導にあたっている。
これまでにピアノを黄海千恵子、故宝木多加志、ブルーノ・リグット、イヴ・アンリ氏に、室内楽をクロード・ルローン氏に師事。

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